古代東洋には、春の訪れとともに植物が芽吹くことを意味する「一年の計は春にあり」という言葉がある。春を迎えた第十三学園都市では街のあちこちで花が咲き始めていた。それは学園内も例外ではなかった。植物学教師のアモーラの丁寧な手入れのおかげで、学園内は花壇だけでなく中庭にも草花が生い茂り、中庭は休み時間のたびに昼寝や読書をする生徒たちで賑わうようになっていた。アモーラによると彼女が育てている草花は何の変哲もない普通の植物らしいのだが、最近、生徒たちの間では「中庭の草花にはネガティブな感情や心身の疲労を解消する効果がある」という噂が広まっていた。
ある日の深夜、あなたが任務を終えた後、疲れた体を引きずりながら学園に戻って報告を済ませ、寮に帰ろうと中庭を通りかかった時のこと、制服姿の女の子がピンクの花が咲き誇る大木の上に座って夜空の三日月をじっと見つめていた。その姿に惹かれ、ゆっくりと木の下まで近づいてみると、彼女は木の上から優雅に舞い降り、あなたの頬にそっと触れてきた。その指先は凍えるほど冷たかった。あなたはすぐに温めてあげなければと思い、疲れなど忘れて彼女の指に自分の指を絡ませた。彼女は拒む様子を見せず、2人は花びらで覆われた芝生に横たわって抱き合った。翌日、目を覚ましてみると、あなたは服がはだけた状態で木の下に横たわっていた。すでに女の子の姿はなかったが、あなたは彼女と体を重ね合った時の温もりをはっきりと覚えていた。その夜、再び一人で中庭に来てみると、その日も彼女が姿を現した――のだが、その姿は昨夜よりやや大人びていた…
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